2022年、確定申告にいくつか変更点が出たのをご存じですか?
確定申告が必要な人
確定申告は、年間の所得金額から、所得控除を差し引いた金額がプラスになる人は、行わなければいけません。
ただし、「年収2,000万円以下で、1ヵ所からしか給与をもらっておらず、副業での所得が年間20万円以下の人」など、特定の要件を満たす場合は確定申告をしなくても良いとされています。
しかし、実際に自分に当てはめてみた際に「確定申告をするべきなのか分からない」「確定申告の変更点が分からない」といった方もいるかと思います。
本記事では、以下の課題が解決されます。
- 誰でも確定申告が必要かが分かるようになります。
- 確定申告の控除の種類や金額が分かるようになります。
- 確定申告の提出方法が分かるようになります。
確定申告が必要な人・不要な人の特徴、年度の変更点について解説します。
確定申告とは?
確定申告とは、年間の所得(事業所得)に対してかかる所得税を計算し、精算する手続きのことです。
毎年1回行われており、1月1日から12月31日までの所得税を、翌年の2月16日から3月15日までに、税務署へ報告・納税します。
また、提出期限が過ぎても、確定申告は可能ですが、以下のペナルティが発生してしまうため、注意が必要です。
- 納める税金に、最大20%の無申告加算税が加算される
- 納める税金に、最大14.6%の延滞税が加算される
- 青色申告特別控除が、最大65万円から最大10万円に減額される
- 2年連続で提出が遅れた場合、青色申告の承認が取り消される
【2022年】確定申告の変更点
2022年の確定申告の変更点は、以下の通りです。
- 基礎控除額の引き上げ
- 給与所得控除額の引き下げ
- 青色申告特別控除額の引き下げ
- 寡夫控除の廃止
- 配偶者 / 扶養控除額の引き上げ
下記では、2022年の確定申告の変更点について、詳しく解説していきます。
基礎控除額の引き上げ
基礎控除とは、所得控除の一つで、一定の所得以下の人なら誰でも受けることができます。
2020年までは、「一律38万円」の基礎控除を受けられましたが、2022年からは、合計所得額によって、基礎控除額が変化します。
合計所得額と基礎控除額の関係は、下記の表のとおりです。
合計所得額 | 基礎控除額 | |
改正後 | 改正前 | |
2,400万円以下 | 48万円 | 38万円 |
2,400万円~2,450万円以下 | 32万円 | |
2,450万円~2,500万円以下 | 16万円 | |
2,500万円以上 | 0円 |
給与所得控除の引き下げ
給与所得控除とは、年間の給与収入に応じて差し引かれる控除で、会社員などの給与所得者に適用されます。
2022年からは、以下の表のとおり、給与収入が850万円以下の場合は、給与所得控除が10万円引き下げとなります。
給与収入 |
給与所得控除額 |
|
改正前 | 改正後 | |
①162.5万円以下 | 65万円 | 55万円 |
②162.5万円~180万円以下 | ② × 40% | ② × 40% - 10万円 |
③180万円~360万円以下 | ③ × 30% + 18万円 | ③ × 30% + 8万円 |
④360万円~660万円以下 | ④ × 20% + 54万円 | ④ × 20% + 44万円 |
⑤660万円~850万円以下 | ⑤ × 10% + 120万円 | ⑤ × 10% + 110万円 |
850万円~1,000万円以下 | 220万円 | 195万円 |
1,000万円以上 |
ただし、年収850万円以下のサラリーマンの場合、基礎控除額が10万円引き上げになるため、税金に影響はありません。出典 : 財務省「年度改正」
それに対し、給与収入が850万円以上の場合は、給与所得額の上限が220万円から195万円に引き下げとなるため、2020年よりも多くの税金を払う必要があります。
しかし、下記の条件に該当する人であれば、「所得金額調整控除」を受けることが可能です。
所得金額調整控除とは、下記のいずれかに該当しており、かつ給与収入が850万円を超える人に適用される控除で、一定の金額を給与収入から差し引くことができます。
- 本人が特別障害者である
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障害者である配偶者や扶養家族と生計を同じくしている
所得金額調整控除では、給与収入から850万円を控除した金額に、10%をかけた金額を控除することができます。
たとえば、給与収入が900万円の場合、「(900-850)*0.1=5万円」が控除対象です。
ただし、1,000万円以上の給与収入は、1,000万円として計算されるため、注意が必要です。
{給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%=控除額※
※1円未満の端数があるときは、その端数を切り上げます。
青色申告特別控除の引き下げ
青色申告特別控除とは、個人事業主(不動産所得・事業所得・山林所得)に適用される控除で、最大55万円、もしくは10万円の金額を所得から差し引くことができます。
2020年までは、個人事業主が青色申告をすることで、65万円(複式簿記による記帳)の青色申告特別控除を受けることができました。
しかし、2022年からは、複式簿記による記帳の控除額が、55万円に引き下げられました、
ただし、下記いずれかの条件を満たす場合は、2020年同様、65万円の青色申告特別控除を受けることが可能です。
- e-Taxを用いて確定申告する
- 電子帳簿で保存する
電子帳簿で保存する場合、帳簿の備え付け日の3カ月前までに税務署に申請書を提出する必要があるため、注意が必要です。
寡夫控除の廃止
2020年までの寡夫控除では、結婚歴がある人のみを対象にしていたため、未婚のシングルマザーやシングルファーザーは控除を受けられませんでした。
しかし、2022年からは、寡夫控除を廃止し、新たに「ひとり親控除」が創設されました。
ひとり親控除では、結婚歴のないシングルマザーもしくはシングルファーザーでも、35万円の控除を受けることができます。
ただし、ひとり親控除を受けるには、下記3つの条件に該当する必要があります。
- 事実婚に該当する相手がいない
- 生計を共にする子供がいる(子供の合計所得額が48万円以下)
- 本人の合計所得額が500万円以下
配偶者 / 扶養控除の引き下げ
配偶者控除とは、所得が一定以下の配偶者がいる場合に受けられる控除です。
2020年までは、配偶者の合計所得が38万円以下でなければ、配偶者控除を受けることができませんでした。
しかし、2022年からは、配偶者の合計所得が48万円以下であれば、配偶者控除を受けることが可能です。
また、扶養控除も同様に、扶養家族の合計所得が38万円以下から48万円以下に引き上げとなりました。
確定申告が必要な人・不要な人の違い
確定申告が必要な人 | 確定申告が不要な人 |
個人事業主やフリーランス | 事業所得が48万円以下の人 |
公的年金を受け取っている人 | 副収入が20万円以下の人 (※住民税の申告は必要) |
不動産所得が20万円を超えている人 | 勤務先から年末調整を受けている人 |
株取引で48万円以上の利益を得ている人 | 公的年金が400万円以下で、源泉徴収を受けている人 |
確定申告が必要な人
上記の表に記述されている人に加え、
- 給与所得が2,000万円を超えている人
- 副収入が20万円を超えている人
- 複数の会社から給与を受け取っている人
- 退職所得の受給に関する申告書を提出していない人
に関しては、確定申告が必要となります。
確定申告のやり方・今後の流れ
下記では、確定申告のやり方や今後の流れについて、詳しく解説していきます。
1.必要書類の準備
確定申告に必要な書類は、下記のとおりです。
- 確認宣言
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
- 収支内訳書 / 青色申告決算書(事業所得や不動産所得がある場合)
- 医療費の明細書(医療費控除を受ける場合)
- 寄付金の領収書や証明書(寄付金控除を受ける場合)
確定申告書には、A様式とB様式があり、それぞれ所得の種類によって使い分けます。
所得が給与所得や公的年金などの人は、A様式とB様式どちらも使うことができますが、個人事業主などの事業所得を得ている人は、B様式のみとなります。
また、白色申告の場合は「収支内訳書」、青色申告の場合は「青色申告決算書」を、確定申告書とともに提出します。
2.確定申告書の作成
確定申告書の作成には、以下の4つの方法があります。
- 手書きで作成する
- 確定申告書等作成コーナーを利用する
- 確定申告ソフトを使う
- 税理士に頼む
確定申告書等作成コーナーは、国税庁が提供しているホームページで、画面の案内に沿って金額などを入力するだけで、確定申告書を作成することができます。
ただし、各種控除の計算は、全て自分で行う必要があります。
3.税務署に提出する
確定申告の提出方法には、以下の4つがあります。
- 税務署に持っていく
- 税務署の時間外収受箱に投函する
- 郵便または信書便で税務署に郵送する
- e-Taxを利用する
確定申告書を書面で提出する場合には、「マイナンバー確認書類」と「身分証明書」の添付が必要となります。
また、e-Taxの手続きにも、マイナンバー確認書類が必要です。
4.税金の納付・還付
税金の納付方法は、以下の5つです。
- 窓口納付
- 預金口座からの振替納付
- e-Taxを利用した電子納税
- クレジットカード納付
- コンビニ納付
また、還付金の受け取りに振込みを希望する場合は、確定申告書の「還付される税金の受け取り場所」に、自身の振込先の金融機関名と、預貯金の種別および口座番号を記載する必要があります。
確定申告の納付と資金について
本記事では、確定申告が必要な人・不要な人の違いや、2022年の確定申告の変更点についてご紹介しました。
確定申告が必要な人・不要な人は、年間の所得額や年金の受給額などによって変化します。
また、条件によっては、払い過ぎた税金の還付を受けることができたり、さまざまな所得控除を受けることも可能です。
まずは、自身の所得額や年金の受給額などを確認し、確定申告が必要なのか不要なのかを明確にしましょう。
その後、必要であれば、確定申告書を作成・提出し、現在の所得や給与などで受けることができる控除を適用しましょう。
確定申告の納付ではまとまった資金が必要になります。
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