ファクタリングを利用する場合、どのくらいの手数料がかかるかご存じでしょうか?

ファクタリングにはさまざまな種類の手数料があり、初めてファクタリングを利用する方にとっては、その仕組みや相場が少々わかりにくいかもしれません。

しかし、手数料は利用者が調達できる資金の額に直接影響するため、仕組みを知っておくことは非常に重要です。

手数料のことを知らないで利用すると、思わぬところで損をしてしまうこともあります。

一方で、手数料に関する知識を身につけて交渉に臨むと、手数料を下げてもらえる可能性すらあるのです。

今回は、ファクタリング利用時にかかる手数料とその仕組みを解説します。

この記事を監修した専門家

金子 賢司CFP

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。 <保有資格>CFP、住宅ローンアドバイザー、生命保険協会認定FP、損保プランナー

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[この記事へのコメント]

ファクタリングの手数料は、売掛先の信用力、契約金額の大小、支払期日の長短、利用経験や、利用する人の人柄も含めて計算されます。
売掛先が信用のおける企業である情報提供を利用者が積極的に行う。
または、自社の売掛先で大きな金額や有名な企業の売掛債権を優先的に活用することで手数料は下げることができます。
また、業績が悪化し切羽詰まった状態でファクタリングを利用すると手数料も高めに設定されてしまいます。資金繰りに詰まってきたら、早めに判断をすることも重要です。いずれにしても、利用する際は手数料は交渉の余地があり、そのポイントはしっかり押さえておきましょう。

手数料の相場

手数料の違い

 

ファクタリング契約は「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類に分けられ、以下の表のように手数料が異なります。

どちらの契約にもメリット・デメリットが存在するため、自社の状況に応じて適切に使い分けることが重要です。

2社間ファクタリング 3社間ファクタリング
手数料の相場 10~20% 1~5%
プレイヤー 自社・ファクタリング会社 自社・取引先・ファクタリング会社
特徴 取引先に知られず利用可能 取引先への通知・同意が必要
入金まで 即日~3日程度 1~2週間程かかる可能性あり

このように、2社間ファクタリングは手数料が10~20%と高く設定されていますが、取引先に知られずにファクタリングを利用できます。

一方で、3社間ファクタリングは取引先への同意・通知が必要となりますが、手数料は1~5%と低く設定されています。

なお、2社間と3社間に共通して、ファクタリング契約後に売掛先が倒産した場合、すべての損失はファクタリング会社が負うため、利用者に買い戻しの請求はありません。

これを償還請求権なしの「ノンリコース契約」と言います。

金子

ファクタリングの手数料は、ファクタリングの業者によっては売掛金の売却額から差し引かれることがあり、手元に残るお金に影響を与えます。
そのため、ファクタリングを利用する人は、資金がひっ迫している場合が多いため、ファクタリング利用時の手数料は極めて重要です。急いで資金調達をする場合でも業者をしっかり比較をすることを怠らないようにしましょう。

もとむら

ファクタリング手数料の仕組みを知ることで、自社にとって良い条件で契約ができるようになります。

2社間契約の手数料が高く設定されている理由

2社間契約のファクタリングでは、以下の理由から手数料が高く設定されています。

  • 債権譲渡登記が必要
  • 利用者が売掛金を使い込むリスクがある

2社間ファクタリングは原則的に「債権譲渡登記」が必須となるため、手続き経費や登録免許税がかかります。

債権譲渡登記とは、債権譲渡の事実を法務局に申請するものです。

債券の権利関係を第三者に主張する対抗要件となるため、万が一トラブルが起こってもファクタリング会社の権利を主張する非常に重要な登記です。

また、2社間ファクタリングの場合、売掛先から支払われる売掛金は一度利用者の手に渡るため、使い込まれてしまうリスクが発生します。

ファクタリング会社としては、このような利用者の使い込みリスクに備えて手数料を上げざるを得ません。

以上のように、ファクタリング会社が負担するリスクの大きさに比例して、手数料も高く設定されているのです。

3社間契約の手数料が低く設定されている理由

一方で、3社間契約のファクタリングでは以下の理由から手数料が低く設定されています。

  • 債権譲渡登記が不要
  • 利用者が売掛金を使い込むリスクがない

3社間ファクタリングの場合、ファクタリング会社は売掛先に同意を得られます。

売掛先と直接やり取りができる場合は債権譲渡登記が必須ではないため、手続き費用や登録免許税はかかりません。

また、3社間ファクタリングの場合は売掛先からファクタリング会社へ直接売掛金を支払うようになります。

利用者を介さずに売掛金の回収ができるため、利用者によって売掛金を使い込まれるリスクが発生しません。

以上のように、3社間契約のファクタリングは負担するリスクが小さいため、手数料も低く設定されているのです。

ファクタリングの手数料を低くするポイント

変動ポイント

2社間と3社間の契約形態の違い以外にも、あらゆる要因によってファクタリングの手数料が変動します。

ファクタリング手数料が変動する要因を知っていれば、事前準備をして担当者との対等な交渉を試みることができ、その結果手数料を下げられる可能性があります。

事業資金がひっ迫している利用者としては、手数料は少しでも抑えたいところ。

手数料が変動するポイントを理解して、少ない手数料で賢くファクタリングを利用しましょう。

金子

ファクタリングを利用する際は、ファクタリング会社の与信調査が行われます。2社間ファクタリングの場合は、主に利用者。3社間ファクタリングの場合は、売掛先の与信調査を行います。
調査する項目は、ファクタリング業者によって異なりますが、自己資本比率、利益額、利益率、借入件数、借入があれば返済実績などがチェックポイントになります。

もとむら

融資の審査に比べ、ファクタリングは審査基準が緩く、債務超過や税金滞納があっても利用できます。ただし、ファクタリング会社のリスクは高くなるため、手数料が上がる傾向にあります。

売掛先の信用力|Point.1

ファクタリングを利用するにあたって、売掛先の与信調査が行われます。大手企業や国の機関など、信用力の高い売掛先ほどファクタリングの手数料率は低くなる傾向にあります。

なぜなら、ファクタリング会社は売掛金の未回収リスクを回避するために、その売掛金を支払う売掛先の信用力を重視するからです。

通常、ファクタリング会社は利用者から売掛債権を買い取り、通常翌月、翌々月となる売掛金の期日前に買取代金を利用者に支払います。

しかし、売掛先の資金ショートや倒産などによって売掛金が正常に支払われなかった場合、ファクタリング会社は損失を被ります。

したがって、ファクタリングの審査では、ファクタリングを利用する会社の返済能力や事業規模といった信用力よりも、実際にお金を支払う売掛先の信用力のほうが重要なのです。

契約金額が大きい|Point.2

ファクタリング会社が買い取る売掛債権の額、つまり契約金額が大きくなるほど手数料は低くなる傾向にあります。

ファクタリングの買取手数料は、すなわちファクタリング会社にとっての報酬です。

たとえば、100万円の売掛債権を20%の手数料で買い取った場合、ファクタリング会社の報酬は20万円で、そこから諸経費も差し引かれることになります。

一方で、1,000万円の売掛債権なら、手数料10%で買い取っても100万円の報酬となります。

ファクタリング会社側の視点で考えれば、売掛債権を現金化するコストは契約金額が大きかろうが小さかろうが変わりません。

したがって、ファクタリング会社は手数料を下げてでも高額な売掛債権を買い取りたいと考えているのです。

売掛金の支払い期日が短い|Point.3

売掛金の支払い期日までが短ければ、手数料も低くなる傾向にあります。

ファクタリング契約から売掛金の支払期日までが長くなると、その間に売掛先が資金ショートに陥ったり倒産したりして、ファクタリング会社の未回収リスクが高くなります。

ファクタリング会社はリスクの高い売掛金に対して、手数料を高くせざるを得ません。

したがって、売掛金の支払期日は短い方がファクタリング会社のリスクを被る可能性が低くなり、手数料を抑えられるのです。

利用回数が多い|Point.4

初回の利用よりも2回、3回と安定した利用実績のあるほうが、手数料を低くしてもらえる可能性があります。

ファクタリングは、売掛債権という将来代金を請求する権利の売買であるため、信頼関係が非常に重要です。

はじめてファクタリングを利用する人と、適切に利用して支払い実績も確かな信頼できる人とでは、ファクタリング会社が負担するリスクが違います。

したがって、売掛金の支払いが一度も遅れたことがないなどのスムーズな取引ができていることを前提として、複数回利用しているうちに手数料を下げてもらえる可能性があるのです。

利用者の信用情報|Point.5

2社間ファクタリングを利用する場合、利用者に対しても与信調査が行われます。

ファクタリング会社によって調査項目が異なりますが、自己資本比率、利益額、利益率、借入件数、借入があれば返済実績などがチェックポイントになります。

基本的に融資の与信調査よりも緩めですが、「事業の利益率が低すぎる」「債務超過状態である」といった事実が発覚すれば、ファクタリング手数料に影響を与えます。

しかし、たとえそのような事実があったとしても、誤魔化したり嘘をついたりするのは避けましょう。

なぜなら、ファクタリング会社の中には、利用者の人柄を重視するところもあるからです。

ファクタリング会社は、利用者を単なる顧客ではなく、対等なビジネスパートナーとして付き合えるか、信頼関係を築けるかなどを注意深く見ています。

さらにファクタリング会社の担当者は、財務のプロでもあります。利用者がどれだけ見栄を張ろうとも、決算書や通帳の数字を見れば会社の財務状況は一目瞭然です。

「会社が困窮した状態にあっても従業員を守りたい」「資金繰りを改善して事業を立て直したい」という情熱のある利用者に対して、ファクタリング会社は手数料を融通してもいいと考えます。

したがって、面談の際は経営や資金繰りの状況について問われても見栄を張らず、ありのままを伝えましょう。

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手数料以外にかかる費用

かかる費用

ここからは、ファクタリング利用時に発生することもある買取手数料以外の費用を紹介します。

これらの費用はファクタリングの手数料に含まれるケースと、手数料とは別に請求されるケースがあります。

知識のない利用者につけこんで、さまざまな手数料を差し引こうとする悪質な業者に引っ掛からないためにも、手数料以外の費用を知っておくことは重要です。

なお、印紙代と登記費用以外の費用は、複数のファクタリング業者から見積もりを取り寄せたり交渉したりすると、抑えられる可能性があります。

事務手数料(~5,000円)

契約にかかる書類作成など事務作業のコストを、利用者が負担する場合の手数料です。

しかし、買取手数料でカバーするファクタリング会社が多く「事務手数料無料」として、別途請求されるケースはほとんどありません。

契約書貼付収入印紙(200円、7,500円)

法律では課税文書として取り扱われる契約書に収入印紙を貼ることが義務付けられています。

ファクタリングで印紙代(印紙税)が必要になるタイミングは、債権譲渡契約を結ぶときの印紙税200円、債権譲渡登記をするときの登録免許税7,500円です。

前者は債権譲渡契約書に印紙を貼るために、後者は印紙税法に基づいて登録免許税を納付するために必要となります。

債権譲渡登記費用(3万円~5万円)

2社間ファクタリングの場合、司法書士に委任して行う債権譲渡登記に、概ね3万円~5万円の費用が発生します。

前述の通り、債権譲渡登記はファクタリング会社が第三者に対して債権を買い取ったことの権利を主張するための重要な証拠となります。

2社間ファクタリングは売掛先への同意を得ないため、二重譲渡や回収不能リスク軽減の目的で債権譲渡登記を行うファクタリング会社が多く存在します。

一方で、3社間ファクタリングは売掛先に同意を得られるため、基本的に債権譲渡登記が不要です。

なお、ファクタリング業者によっては、手数料を引き上げる代わりに、債権譲渡登記を省略可能とするところもあります。

出張交通費

ファクタリングの契約を対面で行う場合、ファクタリング会社の担当者が利用会社に来社するための出張交通費がかかります。利用者がファクタリング会社に訪問する場合も同様です。

たとえば静岡在住の利用が東京のファクタリング会社を利用する場合、担当者が静岡まで出張するために新幹線を利用した場合、利用者は6,000円~7,000円の交通費を負担することになります。

振込手数料(110円~880円)

ファクタリング会社が利用者の指定した金融機関の口座に買取代金を振り込む際にかかります。

振込手数料は振り込まれる金額によって変動し、利用者かファクタリング会社のどちらかが負担します。

着手金

業者によっては、売掛先ごとに着手金を請求するところもあります。

基本的には着手金を請求しない業者がほとんどですが、請求する場合は売掛先1件あたり最大で30,000円程度が相場です。

たとえば、売掛先3社の売掛債権を売却する場合は、3社分の着手金がかかります。

売掛先が多いほど着手金の額が大きくなってしまう恐れがあるため、ファクタリング業者を選ぶ際は着手金の有無についても確認するようにしましょう。

金子

印紙代や登記費用は仕方ないところはありますが、出張費用や事務手数料、業者によっては着手金など明確な相場がない項目も存在します。
資金調達に緊急性を要する場合でも、複数のファクタリング業者から見積もりを取り寄せたり交渉をすれば抑えられる可能性がある項目であるといえます。

もとむら

ファクタリング契約時に面談を行うタイプのファクタリング会社であれば、担当者と直接交渉できる余地があります。

受け取れる金額を左右する「掛目」も重要

掛け目

ファクタリグにおける掛目とは、売掛債権の「買取率」を指します。

ファクタリングは、売掛債権の額面の100%を買い取るのではなく、掛目によって減額された金額が買取対象となります。

掛目は売掛債権の額面に対して75%~90%が平均です。

たとえば掛目80%100万円の売掛債権を譲渡する場合、80万円が買取対象となり、そこからさらに手数料等を差し引かれた金額が受け取れる額となるのです。

なお、掛目によって減額された金額は、ファクタリング会社が売掛債権を無事に回収できた時点で利用者に返還されます。

掛目は未回収リスクの高い2社間ファクタリングよりも、3社間ファクタリングの方が高く設定されていることが多いです。

また、ある程度利用実績があれば掛目が改善される可能性もあります。

掛目はファクタリング業者によって設定が異り、比較すべき重要なポイントです。なるべく多くの資金を受け取るためにも、各社から見積もりをとって検討しましょう。

 

金子

売掛金の買い取り額が掛目によって減額され、手数料も差し引かれて支払われる場合、想像以上に手元で受取れる現金が少なくなることがあります。
この掛目もファクタリング業者によってバラバラなので、各社から見積もりをとる必要があります。
また、掛目もファクタリング業者にとってリスクが高ければ減額も大きくなり、逆であれば掛目による減額は少なくなります。
3社間より2社間ファクタリングの方が、掛目が低くなる傾向があり、ある程度利用実績があれば掛目が改善される可能性もあります。

もとむら

まったく同じ売掛債権の買取を依頼したとしても、ファクタリング会社によって掛け目は異なります。この点からも、利用前に複数の業者から見積もりをとることの重要さがうかがえます。

 

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手数料の低いファクタリング会社をお探しの方へ

本記事で解説したファクタリング手数料が変動するポイントは以下のとおりです。

手数料が<上がる>要因 手数料が<下がる>要因
2社間ファクタリングで契約する 3社間ファクタリングで契約する
利用金額が小さい 利用金額が大きい
売掛先の信用力が低い 売掛先の信用力が高い
売掛先との取引履歴が浅い 売掛先と長期の取引履歴がある
売掛金の支払期日が長い(45日超が目安) 売掛金の支払期日が短い(45日以内が目安)
赤字決算・債務超過・税金滞納がある 自社の業績が好調である
債権譲渡登記を省略する(2社間の場合) 債権譲渡登記を行う(2社間の場合)
初回契約である 継続利用(2回以上)である

上記の手数料に加え、ファクタリング契約の内容によっては出張費や登記費用がかかる場合や、売掛債権の買取金額に掛目が設定される場合もあります。

ファクタリングを利用される方は事業資金がひっ迫している場合が多く、ファクタリング利用時の手数料は極めて重要です。

どれだけ急ぎの資金調達が必要なシーンであっても、「見積もりをとって比較検討すること」「買取金額や手数料について交渉を試みること」といった努力は惜しまないようにしましょう。

ファクタリングの利用時にかかる手数料には必ず裏付けがあります。

どのような条件で手数料が変動するのかを理解することで、よりファクタリング会社と対等な交渉ができ、手数料を下げられる可能性もあるでしょう。

また、何の裏付けもない手数料を請求してくるようなファクタリング会社は悪質な業者である可能性もあるため、リスクを未然に防ぐこともできます。

ファクタリングを利用する前は必ず複数社から見積もりを取り、手数料の内訳を確認したうえで、自社にとってもっとも有利な条件で取引ができる業者を選びましょう。