資金繰りから経営に集中したい方へ。実践的資金繰りを改善する9つの方法を紹介します。

会社の経営を行う時に、なにより頭を悩ませるのは資金繰りです。

資金があれば、会社を継続されられますが、手元の資金がなくなったら、途端に倒産に陥ってしまうかもしれません。そうならないためにも、資金繰りに不安があるなら、早急に改善し、安定した経営に軌道を戻す必要があります。

本稿では具体的な「資金繰りを良くする方法」をわかりやすく解説します。

今回解説する内容を実践することで、資金繰りに困った時も冷静に対処できるでしょう。

 

資金繰りとは

資金繰りっていったい何?

資金繰りとは、会社の「収益」と、「支出」の管理を行い、会社が保持する資産を維持し、今後の会社経営を行うための資金をコントロールすることです。

資金繰りは、近い未来の現金の流れを把握するだけでなく、必要な資金が不足する場合は、資産の資金化を早めたり、負債資金を調達したりなど、(資金繰りをする)実際の行動に結びつきます。

会社は、資金がなければ経営を存続できず、容易に倒産してしまうでしょう。そのため、資金は、しばしば「血液」や「空気」に例えられます。人間は、血液が体全体を循環しなければ生命活動が行えず、空気がなければたちまち息絶えてしまいます。

したがって、資金繰りを適切に管理し、その管理方法に改善点があれば早急に対処することが、会社の経営には必要不可欠です。また、資金繰りを行うための状況判断の目を養うことは、経営者に必要なスキルだといえるでしょう。

資金繰りを良くする6つの方法

資金繰りの手段は、会社によって異なり、「これが正解!」という答えはありません。しかし、資金繰りができない原因を突き止め、意識的に改善することで早期に対策を行えます。

ここでは、できるだけ押さえた方が良い、資金繰りを良くする方法を解説します。

①在庫管理を再考する

在庫管理でこんなにもキャッシュフローが改善?

発注やデッドストック、在庫管理を徹底することで資金繰りが改善します。

資金繰りを良くするためには、「在庫を抱えすぎないこと」が大切です。どんな物であっても在庫を抱えるリスクがあり、在庫が蓄積されると、「管理コスト」や「不要な管理スペース」などが発生し、資金繰りに影響を与えます。

そこで、複数の商品管理を行うのではなく、単品で管理するルールを決め廃棄する期間を定めることで、短い期間で廃棄し、無駄な管理費を発生させないことが大切です。廃棄した不良在庫が多ければ多いほど、管理費が発生しなくなるので、不要な支出のカットが可能になるでしょう。

例えば、1年間出荷がなければ、在庫を10個まで減らし、それ以外を廃棄します。さらに、1年間出荷がなければ、5個まで減らし、廃棄します。そして、さらに1年間出荷がなければ、5個全てを廃棄するといったルールです。このルールならば、段階的な廃棄なので、突然の出荷にも対応できます。

このような徹底した在庫管理が、資金繰り向上にはとても有効です。

②取引先に支払いサイクルを交渉する

支払サイクル交渉のポイント

既存の取引先からの支払いサイクルの見直しや支払い遅延が無いか等「信用調査」を実施。

資金繰りを改善するためには、「売掛金の回収を早めること」が非常に大切です。売掛金は、現実に手元で保有している利益でないため、すぐに資金として使うことができません。急な支出に対応できないことから、早期の回収を心掛ける必要があるのです。

売掛金を早期に回収するには、「ルールを決めること」と、「管理台帳を作成する」ことが必要です。例えば、ルールを決める際は、「請求した日から、2ヶ月間反応がないなら、催促状を送る」、「催促状に反応がないなら、交渉する(第三者を交えて、齟齬が発生しないようにする)」といった流れのルールを決めます。

また、目視での回収期間の確認が大切なので、管理台帳の作成も有効です。取引先ごとに管理台帳を作成し、「A社は月末締め翌月末払い、B社は10日締め翌々月払い」など回収期間を把握しましょう。そして、入金管理表を作成し、入金日をチェックすれば、漏れなく回収できます。

また、売掛金には、「黒字倒産」に陥るリスクが常にあります。黒字倒産を防ぐためには、取引先企業の経営状況や、資産状況などの情報収集が重要です。情報をもとに、売掛金の上限を決定したり、売掛金の回収条件を調整したりして、リスクを事前に回避できます。

③契約時に有利な支払いサイクル交渉をする

契約時は長期視点に立った交渉が肝要

契約時に売掛金の回収を早めるには、「交渉」がポイントとなります。

会社の資金を保つためには、「売掛金の回収は可能な限り早く」し、「支払いは可能な限り遅く」する必要があります。そのためには、取引先企業との確実な交渉を行いましょう。

売掛金の早期回収には、取引先の担当者と関係を深めて交渉するとよいでしょう。販売側は、商品を売ったら、商談が完了したと認識します。その通りですが、取引先にしたら、「購入した商品を活用し、効果を検証している」段階です。

つまり、取引先と関係を深めるには、「商品を活用し、成功するまでの過程」のサポートが大切です。故障や不備があったら対応し、直面している課題を一緒に調査することで、関係を深められ、効果的な交渉が行えるでしょう。

また、支払いを遅くするためには、商品の仕入れ先に、支払いを可能な限り延ばす交渉が大切です。交渉に大切なことは、仕入れ先に「感謝の気持ちを持ち、表現すること」です。例えば、納品の際には、「無事に納品してくれてありがとう」の一言を口にしたり、「暑いのにいつもありがとう」など、相手の気持ちになり、接しましょう。

この言葉の積み重ねが、取引先との関係を深め、円滑な交渉に繋がるのです。

④借入金の支払い方を交渉する

銀行との交渉のポイント

 

借入金についての金融機関との交渉も、資金繰りを良くするために必要です。

目先の対策にはなってしまいますが、月の返済額の減額や、返済期間の延長(利息のみを支払っておき、元本の返済は一時猶予してもらう)などの交渉を行いましょう。

しかしながら、金融機関と交渉するためには、経営改善計画を立てることが大前提となるので、多種の対策が必要になります。経営改善計画を立てるためには、「経費の削減を計画する」、「収入計画は可能な限り低く見積もる」、「設備投資は可能な限り低く抑える」ことなどを焦点に計画を立てましょう。

このように、収入計画を低く見積もったり、設備に資金を投入していないことを金融機関に説明できれば、返済額の減額や延長をする正当な理由を、持ち合わせている証明になり、効率的に交渉が行えます。

⑤"任せっぱなし経理"の認識を変える

経理は経営と一緒と心得る

利益を考えるのと同じくらい経費を考えることが大事。

経営者が経理のことを理解していなかったり、経費となる領収書を税理士にただ渡すだけだと、資金繰りが悪化する原因になります。そのため、経営者の経理への認識を変えることが、資金繰り改善には重要だといえるでしょう。

経理の認識を変えるための一つの対策として、経営者の経費の把握が大切です。例えば、「パソコンの購入費用」や「消耗品の購入」、「サーバー・ドメイン費用」など、経費の支払いを全て法人カードにまとめることで、資金の動きが把握しやすくなります。

また、法人カードの種類によって支払い期限が異なりますが、できるだけ支払い猶予が長いカードを利用しましょう。支払い期限が長いことで、保有する資金をある程度保てるためです。

経営者が、全てを現場任せにすることは、経営を放棄することと同じです。経営者が率先して、指揮を取ることが、資金繰りを良くする方法だといえるでしょう。

⑥投資はキャッシュフローの中でのみ行う

投資に対する考え方で資金繰りが改善

投資は、事業や借入等によって得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金で行う。

企業活動では、投資は欠かすことはできません。ところが、大切だからと闇雲に投資をしては、会社の経営はたちまち泥沼にはまります。資金の流れをしっかりと把握しましょう。

すなわち、投資はキャッシュフローの範囲内でのみ行うことを徹底するべきであり、常にキャッシュフローがマイナスの状態を作らないことが大切です。例えば、仮にキャッシュフローを超えた投資を考えているならば、投資のために会社の資金を投入したり、金融機関の借入金の利用も検討したりしなければいけません。

資金を投入した場合は、資金繰りに直接影響を与え、借入金を利用した場合は利息や元本の返済があるので、資金繰りに影響を与えます。最悪のケースは、借入金の返済をするために、再度借入をすることです。これでは、投資の意味がありません。

投資を行う際は、必要性を十分に考慮し、キャッシュフローの範疇で行いましょう。また、借入しか方法がない場合には、返済の道筋を確実に見通してからにしましょう。

資金繰りの良い会社を経営する3つの方法

資金繰りを良くする方法をいくつか見てきましたが、これらの方法をもとに経営者が資金繰りの良い会社経営をするためには、どうしたらいいのでしょうか。

詳しく見ていきましょう。

①信頼できる税理士に依頼する

支払わなくてよい税金を減らせる税理士に依頼。

資金繰りの良い会社の経営には、税理士に依頼し、助言を受けることが最適です。税理士は、会社の経営状況から総合的に考察して、資金運用のアドバイスをくれるので、安心・安定した経営が行えるからです。

例えば、製造業で大規模な投資、つまり機械の設備投資を行う際の、利益算出のシミュレーションを行ってくれるので、赤字に陥るリスクを回避できるでしょう。また、会社の経営状況に応じて、効率的な節税対策を検討してくれるので、資金運用に冷静に取り組めます。

しかしながら、税理士に依頼すると顧問料が発生します。とはいっても、顧問料のコストを費やしてでも、税理士に依頼するメリットは、十分にあるので迷うことなく依頼しましょう。

試しに他の税理士にスポットコンサルを頼んでみるのも1つの方法です。

②人員配置を適切に行う

人員の配置を適切に行うことで、資金繰りの良い会社の経営が可能です。なぜならば、売上を上げるよりも、利益を出さない分野の総務や人事の社員を、営業や商品開発などの分野に配置替えすることで既存の利益率が向上し、簡単かつすぐに資金繰りに効果が出るからです。

また、総務や人事が配置替えをして人員不足になったとしても、ロボットによる業務の単純化を行うRPAの導入や、デジタル化の推進を行っていけば、少ない人数でも効率的に業務が展開できるでしょう。

③業務効率化ツールの導入やアウトソーシングを利用する

現代は、業務効率化ツールを導入すれば、人間の手を使わずに作業効率を向上できます。また、アウトソーシングの活用で、外部から人材の調達が可能です。

業務効率化ツールは、例えば資金繰りに特化したクラウドサービスの活用で、入金状況や支払い状況などの情報をリアルタイムに共有でき、全社一体で資金繰りに取り組めます。また、アウトソーシングでは、社員を抱える人件費とアウトソーシングの利用料を比較して、アウトソーシングの方が安ければ切り替えることで、資金をプラスに保つことが可能です。

このように、業務効率化や外部の人材調達を視野に入れることが、資金繰りの良い会社経営の近道になるのです。

資金繰り悪化が及ぼす3つの影響

資金は、会社を経営する上での最大の要であると述べましたが、実際に資金繰りが上手くいかないと、どのような弊害が起こるのでしょうか。

いくつか見ていきましょう。

①経営が思うようにいかなくなる

資金繰りができないと、経営を思った通りに進められなくなるでしょう。資金繰りの悪化により、会社の資金に不足が生じ、固定で支払わなければならない管理費や物品を仕入れる費用などを支払えなくなることが原因です。

そのため、利益を追求するはずの本来の企業活動が行えず、さらなる利益不足が重なり、その結果資金繰りが悪化し続ける、負のスパイラルに陥ってしまうのです。

②給料が支払えなくなる

従業員に給料が支払えないことも、資金繰りができないことで発生します。資金繰りができないと、会社の資金を従業員の給料として、上手く捻出できないからです。

給料を支払えなければ、当然従業員は他の会社に流出してしまうでしょう。すると、人材を失った会社は経営ができなくなり、最悪倒産となってしまいます。

③黒字倒産に陥る

資金繰りができないことで、たとえ利益を上げたとしても、黒字倒産の状態に陥ることがあります。売掛金があったとしても、すぐに手元に資金が入ってこないので、経営が成り立たなくなってしまうためです。

例えば、売掛金の回収期限が2ヶ月後であった場合、回収が完了するまでの空白の2ヶ月間は手元に資金がないため、支出があった場合には支払えません。そのため、たとえ数字上は黒字だとしても安心できないのです。

さらに、支出を支払えないことで、資金調達のために借入を行うかもしれません。すると、気が付くと負債が重なって、倒産に陥ってしまうでしょう。

支出の支払いには、必ず資金が必要です。すぐに使える資金を保有するために、良好な資金繰りを行いましょう。

資金繰りを改善をご検討の方へ

さて、今回は資金繰りを良くする方法について解説しました。

資金繰りを良くするための方法は、会社の経営状況によって様々な違いがあります。そのため、自社のキャッシュフロー内での運用や、資金の回収・支払い期限の確実な交渉などを行い、効率的な資金繰りを実現できるように努めましょう。

1つひとつ確実に改善していけば、資金繰りは良くなっていき、会社の大きな成長に繋がっていくのです。